プロバイダ責任制限法
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
(平成十三年十一月三十日法律第百三十七号)
(趣旨)
第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった
場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情
報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めると
ころによる。
一 特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通
信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号
に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信
(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を
除く。)をいう。
二 特定電気通信設備 特定電気通信の用に供される電気通信設備(電気通
信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。)をいう。
三 特定電気通信役務提供者 特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介
し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう。
四 発信者 特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体
(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに
限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置
(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに
限る。)に情報を入力した者をいう。
(損害賠償責任の制限)
第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当
該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務
提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによっ
て生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を
防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいず
れかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係
役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでな
い。
一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人
の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知ってい
た場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利
が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由が
あるとき。
2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措
置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に
生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防
止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各
号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
一 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によっ
て他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があっ
たとき。
二 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする
者から、当該権利を侵害したとする情報(以下「侵害情報」という。)、
侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号にお
いて「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対
し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」
という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供
者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止
措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信
者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防
止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。
(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者
は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供
される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係
役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権
利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に
資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請
求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたこ
とが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のた
めに必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があ
るとき。
2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当
該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他
特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見
を聴かなければならない。
3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみ
だりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をして
はならない。
4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことに
より当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失
がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務
提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りで
ない。
附 則
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める
日から施行する。
施行期日を定める政令
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任及び発信者情報の開示に関する法律の施
行期日を定める政令(平成十四年五月二十二日政令第百七十八号)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する
法律の施行期日は、平成十四年五月二十七日とする。
発信者情報を定める省令
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法
律第四条第一項の発信者情報を定める省令
(平成十四年五月二十二日総務省令第五十七号)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する
法律第四条第一項に規定する侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務
省令で定めるものは、次のとおりとする。
一 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
二 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
三 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、
番号、記号その他の符号をいう。)
四 侵害情報に係るIPアドレス(インターネットに接続された個々の電気通
信設備(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第二号に規
定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を識別するために割り当てられる
番号をいう。)
五 前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供
者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
附則
この省令は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の
開示に関する法律の施行の日(平成十四年五月二十七日)から施行する。